■眼底
■記載
主文
本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
〔申立て〕〈控訴人ら〉
「原判決中控訴人らの社内預金返還請求権に係る部分を次のとおり変更する。控訴人らが破産者株式会社中山恒三郎商店に対する横浜地方裁判所昭和六〇年(フ)第二八号破産事件において社内預金返還請求権として別紙債権目録記載の債権を一般の優先権ある債権として有することを確定する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求める。
〈被控訴人〉
主文第一項と同旨の判決を求める。
〔主張〕
次のとおり当審における新たな主張を付加するほか、原判決の事実摘示中控訴人らの社内預金返還請求権確定請求に係る部分のとおりである(ただし、原判決一〇枚目表一〇行目の「社宅」の次に「(前記四棟のうちの一棟)」を加える。)。
〈控訴人ら〉
1社内預金債権は商法二九五条所定の債権に該当する。
すなわち、同条は労働の対価たる性質を有しない債権をも保護することを目的とする規定であり、同条に掲げられた身元保証金返還請求権は例示にすぎず、社内預金も同条の保護対象となつているものである。
このことは、会社更生法一一九条が「会社の使用人の預り金の返還請求権」を手続開始前六月間の給料及び身元保証金返還請求権と共に共益債権としていることや、破産法三六六条の一二が「雇人ノ預リ金」の返還請求権を給料や身元保証金返還請求権と同様に非免責債権としていることとの対比からいつても明らかである。
社内預金が労働者にとつて便宜であつたり、その任意的選択によつてなされる場合もあろうが、右制度の基本的な性格は、企業に無担保、低利の資金を確保すると同時に労働者の企業への依存度と定着性を強めるところにあり、企業の破産に際してこれに優先的保護を与えないことは、社会的現実から遊離した取扱いであり、不公平であるのみならず、会社更生手続であるか破産手続であるかによつて大きな格差を生ずることとなって不当である。
仮に社内預金のうち任意に預けたのではないものについてのみ商法二九五条を適用すべきものとしても、前述のような社内預金の性格からすると、右の任意とされる場合は労働者が高利の取得を目的とするなど特に主体的な自由意思による選択として社内預金をした場合に限定されるべきである。
2控訴人らが社宅取得のためにした本件社内預金は、訴外会社の独裁的な経営者であつたAの一方的な意向によつて、控訴人らが社宅の内払代金として用意した金員を社内預金にさせられ、かつ、将来社宅を譲渡してやるとの約束のもとにその払戻しを受けるのを禁じられたまま、控訴人らが社宅の譲渡を求めても「しばらく待て。」と言われて延び延びになつて来たもので、その結果控訴人らは、当面社宅の借受けを継続することを余儀なくされる一方、会社は右社宅を第三者の担保に供するとともに控訴人らの支払つた代金の引当てともして二重に利用していた。
このような状況のもとでは、右社内預金の払戻しを受けることは事実上不可能であつた。
このような実態からすると、右社内預金は非任意的なものというべきである。
〈被控訴人〉
右2の控訴人ら主張事実は、本件社宅購入に関する社内預金の成立が非任意的なものであつたとの点を争い、その余はすべて認める。
〔証拠〕《省略》
理由
一当裁判所も、控訴人らの社内預金に関する本訴請求は原判決別紙(二)債権目録記載の控訴人らに係る社内預金返還請求権欄に記載された額の請求権を優先権ある債権として確定することを求める限度で理由があり、その余は失当であると判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか原判決の理由説示中の関係部分と同一であるから、これを引用する。
1原判決一八枚目裏九行目の冒頭に「原本の存在及び」を加える。
2同二〇枚目表四行目の「綜合すると、」の次に「控訴人らの社内預金には、臨時賞与が控訴人らに交付されずにそのまま全額社内預金口座への入金として処理されたものと社宅購入に関連して預け入れたものとがあること、訴外会社の従業員の持ち家に対する援助については特別の制度はなく、その方法は社内貸付金、利子補給、社宅の払下げ等であり、対象は社長の気に入つた者とか将来訴外会社の中心としてやつてもらいたい者で、申し出れば誰でも受けられるものではなかつたこと、」を、七行目の「でき」の次に「(このうち、就業規則二五条に臨時賞与の支給に関し控訴人ら主張のような定めのあることは当事者間に争いがない。)」を、同裏九行目の「対象」の前に「適用」をそれぞれ加える。
3同二一枚目裏二行目の冒頭から同二二枚目表一行目の「いうべきである。」までを「ところが、控訴人らの社内預金中の社宅購入に関連して預け入れられた部分は、控訴人らがその居住している社宅を一般の住宅を購入するよりも有利な条件で買い取るため、将来その代金の一部に充当する目的で他の預貯金を解約するなどして預け入れたものであり、右預入れが社長の指示に基づくものであつたとしても、右のように社宅購入の手段としてされたものである以上、控訴人らの任意の預入れというべく、また、実質的に見ても、雇用関係を発生の契機とするとはいえ、雇用関係との法的な結び付きは希薄であつて、むしろ通常の不動産取引上の債権に類するものであるから、一般債権と区別して特にこれらを保護すべき理由は見出し難く、商法二九五条の適用対象とはなりえない債権というべきである。
社長が控訴人らに対し右社宅購入に係る社内預金の払戻しを受けることを禁じており、また控訴人らの社宅譲渡の要請に応ずることなく日時を経過したことは当事者間に争いがないが、このような事実も右社内預金の法的性質について右のように解するのを妨げるものとはいい難く、控訴人らの挙げる会社更生法や破産法の規定は、その文言が商法二九五条と異なるのみならず、これら規定はいずれも使用人の保護を目的とするとはいえ、その適用される局面はそれぞれ異なり、必ずしも同一に解釈されなければならないものではないから、この点も前記解釈の妨げとはならない。」と改め、三行目の「対象」の前に「適用」を加える。
4同二二枚目表一〇行目から末行にかけての「その払戻し部分」から同裏一〇行目の「いえないことになる。」までを「右払戻しが商法二九五条の適用対象となる臨時賞与の組入れ部分の預金の額の減少を招かないかどうかは問題である。
しかし、右減少を認めなかつた原判決に対して被控訴人は不服を申し立てておらず、右の点は本判決の結論に影響を及ぼさないので、ここでは右減少がないものとして判断を進める。」と改める。
二よつて、原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九三条に従い主文のとおり判決する。
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